過重労働は感情をうばう

 

働き方改革関連法案の議論が進む中、裁量労働制の拡大が問題となりました。

 

国会では、政府が議論の根拠としてきた調査データに誤りが発覚。けっきょく裁量労働制の拡大は法案から全面削除されました。

 

自由な裁量が保障された裁量労働制に合理性はありますが、これを残業代カットのために拡大すると悲劇になりかねません。 

長時間労働の実態は変わらないにも関わらず、残業代は支給なし、定額で働かせ放題のような状態が危惧されています。

 

「感情の消滅や鈍麻、内面の冷淡さと無関心。」

 アウシュビッツ強制収容所及びその支所での心理学者による手記「夜と霧」(ヴィクトール・E・フランクル)では、苦痛に満ちた収容所生活での被収容者の心理がこう描かれています。

 

 

夜と霧 新版

夜と霧 新版

 

 

 

逃れられない強制労働の中では、怒りや苦しみだけでなく仲間への関心や優しささえも感じないようにすることで、人は自分を守るのです。

 

趣味や家族との時間、健康など、過重労働は人から多くを奪います。

その中でも、失ったことに気づきづらく、かつ根源的なものが、感情ではないでしょうか。

 

裁量が与えられず残業代の出ない裁量労働制があるとすれば、自由と対価のない強制収容所に似ています。

 

生きるために感情を失うとしたら、何のために生きるのでしょうか。働くために生きるのではあまりにさみしい。 

目先のコストカットではなく、過重労働の解消を出発点に、一人ひとりが感情豊かに生きることのできるような働き方改革になってほしいと思います。