「私たちが何のために生きているか、誰にわかるっていうの?」

新型コロナウイルス感染症の影響で、多くのイベントが自粛されています。私も趣味の演劇が公演中止になり、仕方ないとはいえ、残念でした。

 

今月初めには劇作家・演出家の野田秀樹さんが「公演中止で本当に良いのか」という意見書を出しました。「感染症の専門家と協議して考えられる対策を十全に施し、観客の理解を得ることを前提とした上で、予定される公演は実施されるべき」とし、「ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは『演劇の死』を意味しかねません」と訴えたものです。

 

野田秀樹さんは昨年、ロックバンドQueenの音楽を使って『Q』という舞台を作っています。戦時下および戦後のシベリア抑留における「全体主義」を批判する物語でした。パンフレットの巻頭言にも「大量の人間が、ひとくくりで、同じ『運命』を背負わされるとき、そこでは、一人一人の『人生』が失われている」とあります。

 

この状況で公演をやるべきとも言えませんが、公的補償もないまま一律中止とするのがいいのか、演劇が不要不急だとして何が必要火急なのか、いち演劇ファンとしてモヤモヤしてしまうところです。

 

ちなみに意見書の終わりに引用された「いかなる困難な時期であっても、劇場は継続されねばなりません」との言葉は、Queenの名曲『The Show Must Go On』を意識したものだと思います。フレディが亡くなる直前の曲です。「Does anybody know what we are living for?」というフレーズが最高ですね。訳は「私たちが何のために生きているか、誰にわかるっていうの?(誰にもわからないよね)」という感じでしょうか。

 

パンデミックは思っていたより長引きそうです。先が見えない不安な状況ではありますが、人生に必要なものを見失わずに生きていきたいところです。