「最近流行ってますよね、LGBTとか」

映画『ミッドナイトスワン』を観ました。草彅剛さんが新宿のニューハーフショークラブで働くトランスジェンダーの凪沙を演じています。

 

原作・脚本も手掛けた内田英治監督はかなり多くの取材を経て制作したそうですが、中でも私が特にリアリティーを感じたのは、彼女が昼間に働くために受けた面接のシーンでした。(セリフはうろ覚えですが、)中年の男性面接官が、彼女に「最近流行ってますよね、LGBTとか」「大変ですよね、僕も講習会とかで勉強したんですよ」などと話しかけるのです。

 

当事者からすれば、世間の流行りに乗ってトランスジェンダーになったわけではないし、それは講習会の机上の勉強などといった次元ではなく、自分の身に起きているリアルでしかないと思います。だからこの面接官はちょっとズレているし、無神経な言葉であることは否めないでしょう。でも悪気があるわけではないし、差別しようとしているわけでもない。講習会にもいちおう出席して、自分の知らないことを学ぶ意思があるわけで、「同性愛が広がれば足立区は滅びる」などと発言をした議員とは違います。むしろ面接官は「自分はLGBTに理解があるほうだ」と思っていることでしょう。私の体感として、最近は足立区議のような人に遭遇することはずいぶん減りましたが、こういう人にはよく出会います。

 

LGBTに理解を示すことが社会のマナーのようになってきていますが、だからといって括って何かひとつの集団のように捉えてしまうと、先ほどの面接官のようなズレた発言につながります。先述の議員は性的少数者はまわりにいないとも言っていましたが、普通に存在する隣人ですし、その一人ひとりがそれぞれ異なる嗜好、個性、考え方を持っています。流行や風潮としてではなく、当事者に向き合うということが差別を解消していく一歩ではないでしょうか。